現実
いつもと何も変わらないこの教室。
机にイス、落書きされた黒板に、物で散らかった棚。
しゃべりかける友達に反応する友達や、愚痴話で盛り上がる女子達。
クラスの中で浮いてる奴をちょこっとイジる、性悪い男子達。
いたって普通だ。
一人ぼっちに、ギラギラ光る太陽。
それをそっと包み込むような青い大空。
そしてしたからぐんっと支える雲。
いつも通りで、なんも変わらない。
その中で僕は、一人ゆっくりと小説を読み始める。
頭の中で広がるその世界は、どんどん僕の中で進化していく。
主人公と、その仲間達。
どこにでもあるようなストーリーでも、ひとつひとつ味が違う。
ああ、僕もこんな世界に生まれたかった。
地球に生まれた以上、ありえない話を現実にできるわけがない。
選ばれた勇者になって、魔王を倒して。
強くなって、有名になって。
ひとを救えて。
呪文使って回復したり、直せない病気も一瞬で。
死んだ人も、ひとつ言葉を放てば生き返ってしまう。
そんな世界でもいいから、この退屈な世界から抜け出したい。
何ひとつ変わらないこの世界。
僕はその世界のすみで、大きな空を見上げながら、
「めんどくさい世界をよくお造りになられたもんだ。」
居るはずもない『神様』という存在にそう言った。